霜月 朔(創作)

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夏の匂い



残酷で醜い世の中の、
闇の中で、生きてきて。
私自身の魂は、
闇色に侵食されて。

心の底に刃を忍ばせ、
感情を外套に隠して、
醜悪な人間の隙間で、
藻掻いてきました。

そんな、
永遠とも思える暗闇の中で、
偶然出逢った貴方は、
闇色しか知らない私には、
余りに眩しい星でした。

貴方の無邪気な笑顔は、
まるで向日葵の様に、
明るい世界で、輝いていて。
私に知らない希望を、
教えてくれました。

しかし貴方は。
私の様な酷く醜く穢れた人間が、
触れることは赦されない、
純粋な魂でした。

季節は巡り、
緑は濃く、大きくなり、
空は青く、高くなって、
ふと香る夏の匂いは、
夏の訪れを声高に告げます。

余りに強い光に、
私は目を背けます。
色を濃くした影は、
心の闇を更に黒く染めます。

夏の匂い。
瞼の裏に浮かぶのは、
手の届かない…貴方の笑顔。

7/2/2025, 5:58:06 AM