極解の魔法使い

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【お題】既読のつかないメッセージ

いつも通りに定時に仕事を終え、
いつも通りに車に乗って帰路に着く。
『そろそろ、ハロウィンの季節か』と職業上、少し憂鬱な気分になりながらも、車を走らせながら夕方のニュースを聞く。
・・・・・もう、助手席に乗っていた彼女が行方不明になってから、5年が経とうとしていた。
偶に、連絡の取れなくなった彼女のL〇NEにメッセージを送っているが
『すまん、報告書の作成が手間取っているから先に帰っててくれ』
『OK!終わらなくても、遅くならないうちに切り上げて帰って来てね』
コレが、まさか最後の会話になるなんて、誰が想像しただろうか。
誰よりも強くて、
誰よりも優しい彼女が、
突然、この会話を最後に行方不明になるなんて
行方不明になる素振りが・・・・・否、自分が嫌いで黙って自分の前から離れる位ならまだイイ。
彼女の心の機微に気付けなかった俺自身の落ち度と言う話だけで済む。
まさか自分の前だけでなく、世界から消えた様に、居なくなるなんて誰が思うだろうか?
誰が・・・・・俺よりも剣の腕が立ち、
並の男よりも力が強い、少し、一人で暗い所が苦手なままの彼女が、
誰にも言わないで、消えると思うのか。
ずっと、ずっと、優秀な部類であるはずの俺の頭脳に問いかける。
『何故、あの日、待たせてでも一緒に帰らなかったのか』
『何故、【好きだ】と言うのに時間がかかっているのか』
気付けば、家の駐車場について、そのままハンドルの前に突っ伏していた。
「・・・・・」
画面を開けて、L〇NEを開く。
朝送ったメッセージに、相変わらず既読は付いていない。
溜息をもらしながらも、既読がつかなくなった彼女に、
『好きだ』
と1度書いて・・・・・でも、消して
『もうすぐ冬だな。そっちは大丈夫か?寒くないか?』
と、当たり障りのないメッセージを送る。
行方不明になったあの日から、ずっと、夕方にメッセージを送り、朝、出勤前に既読の確認をして、メッセージを送る。帰宅後に既読の確認をしてメッセージを送る。
コレの繰り返し。
それでも、【生きているはずだ】と信じて。
今日も、今この時も、メッセージに既読が着く事を願って送る。
いつか必ず、彼女に『好きだ』と伝える為に。

By ある刑事の知られざる日課と苦悩より

9/21/2025, 10:00:45 AM