教室に生温い風が吹き込む。半透明のカーテンが舞って、少しの間私の視界を覆った。手持ち無沙汰になった気がして耳を澄ませば、日常が聞こえてくる。
板書の音、教師の話す声、外から聞こえる暑さに喘ぐ声、生き物達が必死で謳歌する声。その全てが紛れもなく私の全てだった。
だから、夢現な私は、この世界をこのまま閉じ込めたくなった。微妙に生きづらくて繊細な、今しかない幸福を享受し続けたかった。そんな事出来ないと分かっているけれど、思考は変わらなかった。
ふと、強い風が吹き付けた。教科書の頁がぱらぱらと捲れていく。それが、現実に覚める合図。
そこには、少しだけ枕を濡らした私が一人だけ。大人というのは、こんなにも冷たい涙が流れるものだったのか。けれど、あの時止めたかったものなんて絶対に止められなくて。大人にも子供にもなり切れない私は、また、あの日常に焦がれてしまうのだろう。
題:またいつか
7/23/2025, 2:14:46 AM