ひどく硬くて重たい塊を抱えていた。
「重いよ、捨てたいよ」
泣きながらそう訴えるけど、そういえば言うほど、どうしてかこの腕はぎゅうと塊を抱きしめた。
手放し方がわからない。壊すこともできない。
「重たいよ、苦しいよ。どうすればいいの」
日に日に重くなっていく塊が、この足の歩みを止める。とうとう立っていられなくなって、座り込んでしまった日に、風船を持ったその人は言った。
「ねぇ、空を見てごらんよ」
「空?」
「だって、君はいつも俯いている。もったいない。今日の空は、一段と綺麗なのに」
ほら、と人差し指が天を指す。つられて顔を上げると、ああ、確かに。柔らかな日差しは微笑むように、私にも降り注いでいる。
「綺麗だね」
すると、体が軽くなったような気がして、はたと見たこの手は、風船がくくられた紐を握り締めていた。
「飛ばすなら今日は絶好の日だね」
「なら、話を聞いてくれる?」
「いいよ。僕の話も聞いてくれるならね」
お題:空に向かって
4/2/2025, 4:11:24 PM