「だからね、終わりにしよう」
僕は彼女にそう言った。
ファミレスのとあるテーブル席で僕は僕の最愛の人と向かい合って座っていた。
「僕たち、別れよう」
彼女にそう伝えると目に涙を浮かべた。
彼女は静かな声で、なんで? と一言。僕は一度も思ったことのない僕にしてくれた優しさを、彼女への不満みたいに言った。
「家に来て勝手に洗濯するところが嫌いだった。
冷蔵庫の中を見て勝手に料理するところが嫌いだった。
ご飯を残した時、気にしなくていいよって言ってくれたところが嫌いだった。
本棚の小説を読んで勝手に感想を言うところが嫌いだった。
風呂に入ったあと、勝手に掃除するところが嫌いだった。
一緒に出かけた時、お洒落して、気が付かなかったら不貞腐れるところが嫌いだった。
少し歩いただけでバテてしまう僕のために自販機で飲み物を買ってくれるところが嫌いだった
君のすべてが嫌いだった。
だからね、終わりにしよう」
伏せ見がちにそう言った。目を伏せてないと言えなかった。
彼女の涙を押し殺した声が聞こえる。
「分かった。私たち、別れましょう」
そう言うと彼女は席から立って出ていった。
彼女の『おもり』にはなりたくなかった。
彼女には僕よりも他に相応しい人がいる。
余命宣告を受けて何も食べられなくなった僕は席から立つ前に一言、もう一度だけ彼女の作った肉じゃがが食べたかったなぁ〜と呟いた。
7/15/2024, 12:26:17 PM