Shamrock / 村雨

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[※hrak二次創作/Mr.成代/FGO×hrak]

《諸注意》
※最早別人(キャラ崩壊)/型月産Mr.(秩序・中庸)/原作には無い特殊設定有り/尻切れトンボ/リハビリ品/


※嫌な予感がしたら[次の作品]をタップ推奨



作業BGM:『C.r.u.s.h.e.r.-P/E.C.H.O』


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 ──いつからこうなったんだっけ?


 幼少期から漠然とした違和感を抱いていた。
 世界人口の約八割が当たり前に"異能"を使えるという"異常"。そして隠すこともせずに大っぴらに見せびらかす姿。極め付けは誰もが"ヒーロー"とやらに憧れる精神性。まるで洗脳教育でもしているかのような有様で薄気味悪かった。

 ──気持ち悪い。
 "ヒーロー"と"ヴィラン"に向ける民衆の目が気持ち悪い。実際に目の前で起こっている騒動を見世物として楽しんでいる姿が悍ましい。
 どうして笑っていられるんだ。
 見えないのか、すぐ近くでぐったりと血を流して倒れている人間が。戦闘の只中に取り残されて恐怖に染まった誰かの目が。
 分からないのか、蛆虫のように群がる野次馬のせいで"ヒーロー"が全力を出せなくなっているのが。"ヴィラン"が精神的に追い詰められて後戻りできなくなっているのが。

 ──気持ち悪い。
 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッ!



『────アレ、いらなくない?』



 まるでその姿が、



『ふう。やっと止まった。最期までしつこかったな、コイツ』



 "妖精"、み、たい、で────。







「────圧紘くん?」

 近くで聞こえた可愛らしい声にはっと目が覚めた。酷い夢を見た。汗がひどい。心臓がうるさい。一瞬自分がどこにいるのか分からなくて目線を彷徨わせると、金糸の少女に顔を覗き込まれる。

「…………トガちゃん? 何で、ここに……」
「はぁい、トガなのです。圧紘くんが魘されてたので起こしちゃいました。大丈夫?」
「あぁ、うん……起こしてくれてありがとうね。大丈夫。変な夢、見ただけだから」
「本当ですか? ウソじゃない?」
「ホントホント。ごめんなぁ、煩かっただろ」

 まだいつものヘアスタイルにセットされていない頭を撫で、そのまま手櫛で軽く髪を梳いてやる。手袋をしないまま触るのはもしかしたら初めてかもしれない。引っ掛かりのない柔らかな金糸を梳き続けていると目の前の少女──トガヒミコは口元に笑みを浮かべた。

「それこそ大丈夫なのです。でも仁くんと荼毘くんがちょっと心配してました。起こして良いか分からないって言ってたのです。なので私が来ちゃいました」
「そっかぁ。……トゥワイスは分かるけど、荼毘が心配するのはイメージできねェなぁ」
「飼い主さんの足元をウロウロする猫ちゃんみたいでした」
「ふはっ、何ソレ。一気に想像しやすくなったんだけど」

 ソワソワと真顔のまま落ち着かずに彷徨く荼毘を想像してみる。なるほど、言い得て妙だ。逆にトゥワイスに関してはあの姿のままで想像できた。きっと目尻を下げて、泡を食ったように心配する。あの男はヴィランでいることが不思議なくらいにその性質は善人だから。本当に、あの男は環境に恵まれず、運も悪過ぎた。
 寝起きで鈍いままの頭で思考を巡らせていると、トガは何を思ったのか静かにこちらの上に乗り掛かり、左胸の辺りに耳をつけて抱き付いてきた。側から見たら事案案件だが、本人にその手の思考は一切無いことは今までの行動を見れば分かる。だからこそ、どうして引っ付いて来たのか分からない。

「……眠くなってきたのでこのまま寝るのです」
「んんっ……ちょ、こらっ、部屋戻りなさいって」
「イヤです」
「イヤかぁ……もう。後でちゃんとアイツ等に説明しろよ?」
「はぁい。でもみんな勘違いしないのです」
「えぇ、そうかぁ……?」
「はい」

 トガに引っ付かれた箇所から体温が混じり、うとうとと眠気が戻って来る。子供体温って凄い。さっきまで眠ることすら億劫だったのに、今は薄寒さが遠退いて指先まで温い。

 ──あぁ、だめだ。ねむい。

「……おやすみ、トガちゃん」
「おやすみなさぁい、あつひろくん」



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 その呼吸が寝息に変わったことを確認してそっと顔を覗き込む。普段は目出し帽と仮面で隠れている顔は青白く、閉じられた目の下には隈ができていた。
 Mr.コンプレスは全国指名手配の怪盗であり、連合のメンバーも彼を紹介した義蘭もその認識だった。────神野から離脱して、ある程度落ち着くまでは。

 ヒーローがコンプレスの名前を言ったとき、仮面を付けて顔が見えないはずの彼の様子が気になった。そのときは理由なんて分からなかったが、後に引っ掛かりを覚えていた荼毘が調べてみたところ、コンプレスがアングラヒーローとして活動していたことが判明した。つまりヴィラン連合へはスパイとして潜り込んだ訳である。そのヒーローがヴィランとして名前を呼ばれたということは────捨て駒にされた、ということだ。
 ヴィランである自分たちですら同情する程度には酷い話だと思う。真面目に任務を遂行しようとしていたコンプレスを、碌な情報を持って来ないからとヒーロー側──この場合は『公安』だろうか──は早々に斬り捨てた。自分たちの話を聞いて、本当に欲しかった言葉を本心から口にしてくれた優しい人を、簡単に、呆気なく捨てた。コンプレスはあのとき、どんな気持ちでオールマイト達を見ていたのだろう。
 そっと頬に触れてみる。ひんやりと冷たくて、その奥にある僅かな熱が無ければ死体かと見紛うほど温度が無かった。

 ──静かに扉が開く気配がする。起こさないようにか極力音を立てずにベッドまで来た男は、こちらの様子には特に触れずに眠るコンプレスの顔を覗き込んだ。

「……今眠ったので起こしちゃダメですよ」
「分かってる。……にしても酷ェ顔色だな。隈もあるじゃねえか」
「さっきは指先まで氷みたいでした。魘されてたときは汗も酷かった気がするのです」
「それでも引っ付いてるのはなかなかだと思うぜ。……何か言ってたか」
「圧紘くんはイヤな臭いしないので気にならないのです。……『気持ち悪い』とか、『クソ妖精』とか言ってました。あと『頭オーロラかよ』とも言ってたのです」
「どんな夢だよ」
「分からないのです」

 男──荼毘は継ぎ接ぎの手をコンプレスの首に当てた。そのまま指をかけて力を込める……なんてことはなく、ただ当てただけ。他人よりも体温が高いらしい彼の手のおかげか、先ほどよりも僅かに表情が緩んだ。

「ねぇねぇ、荼毘くん」
「……何だよ」



「──圧紘くん、私達が貰っちゃって良いよね?」



「……」
「あの人達、圧紘くんのことを捨てました。だからもう良いよね、私達"だけの"『ミスター』で良いんですよね?」
「──あぁ。俺達『ヴィラン連合』の『仲間』だ」
「んふふ、やったぁ。じゃあ圧紘くんは"私達"の"ヒーロー"なのです」
「……そうだな」





[瞳をとじて]







 ──もう絶対、返してあげない。



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習作(例の如く勢い)

最近またアニメ追い始めた身ではあるのですが実は登場回までまだ追い付いておらず、二次創作知識とネット情報で書いているため解像度めちゃくちゃ低いです……
(※トガちゃんの呼び方についても原作で使われていない場合はこの話の中だけの設定として下さい)

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1/23/2025, 12:38:45 PM