大昔、私達の祖先が生まれた頃、彼らは背中に翼を生やし、自由に空を飛び回り、島から島へ拠点を移していったらしい。
ある時、豊かな陸地を見つけた祖先たちは、森を切り開き、田畑を耕し、天敵から群を守る術を編み出し、定住した。
後に、子孫に引き継がれてきた背の翼は退化し、二足歩行が当たり前の姿となった。
両手は、道具を器用に操り、様々な物を生み出し、文明開化が促進された。
末裔の私達は、学校で、私達の起源を学ぶ。
子どもたちは、大人たちから繰り返し、耳タコなほど聞かされてきた話だ。
この貧しい土地に留まるのは、やはり何も持たない、貧しい私たち。
豊かさを享受していた祖先の、末裔の中でも一握りだけ、秀でた能力を持つ者たちがいた。
彼らは知を結集して、この貧しい土地を捨てて豊かな土地へ移動する方法を考え出し、実行した。
残された者たちは、ますます土地とともに廃れていくのみと思われた。
今日も、名を知らぬ誰かを、生きている誰かが弔う。
一週間前には、私も親しい友人を弔った。
涙は出なかった。
ここはそういう場所だから。
天敵から逃れられても、ここは最も死と隣り合わせのところかもしれない。
獣の鳴き声がする。
耳を澄まし、空を見上げる。
かつて、祖先が自由に飛び回った空は、最早、遠すぎて、夢物語の産物にしか感じ得ない。
それでも年下の子ども、自分の弟や妹たちにとっては、いつか手が届く場所らしい。
その、遠くの空へ、私たちが飛び立てるのは一体いつになるのだろう。
#遠くの空へ
4/12/2024, 3:46:15 PM