カレンダーの月末、8月31日に赤ペンでチェックが入っている。
余剰スペースには午後5時とだけ書かれていた。
大抵の月末には同じ印がついている。
ただの締め切りだ。
毎月のデッドラインが月末の午後5時。
今月の末日は日曜日だから、29日の金曜日に締め切りは前倒しされていた。
締め切り前になんとか原稿を渡す。
単なる俺の書き間違えで、今日は予定なんてなにもなかった。
世間が夏休みということもあり、夏は執筆作業が増える。
溜まりに溜まった眼精疲労を少しでも回復するべく目を閉じた。
今日は1日中、ベッドの中でゴロゴロと自堕落に過ごしている。
今月の締め切りから抜けただけで、明日の9月に入れば9月の締め切りに追われるのだ。
日々締め切りに追わ続ける生活が嫌にならないといえば嘘になる。
だが、今はそれから逃れようとは思わなかった。
彼女への想いが言葉として溢れてどうしようもないうちは、俺はきっと締め切りと対峙するのだろう。
今日で夏が終わる。
残暑はしばらく続くだろうし、日が落ちてもまだまだ蒸し暑かった。
それでも期待せずにはいられない。
むせ返るような暑さのなか太陽よりも強くきらめいた彼女の笑顔が、秋という季節にはどんな表情に移り変わっていくのか、と。
『8月31日、午後5時』
9/1/2025, 6:02:03 AM