シャイロック

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キャンドル

 揺らぐ炎と、流れる水の音、ちょっと湿った土の匂い、どれも安らぐし癒やされる。何か、人間の本能に訴えかけるものが有るのだろう。
 決して、蛍光灯や電球の灯りではない。焚き火やキャンドルの炎が揺らぐのは、なんとも美しいし、いつまでも見ていられる。
 ましてや、好きな子と手を繋いで歌いながら見つめたキャンプファイヤーの炎は、もう10年も前の話だが今でも忘れられない。
 彼はイケメンとまではいかないがとても優しい目をしていた。キャンプファイヤー直前のフォークダンスのとき、私が次に控えているのを知ってこちらを向いて微笑んだ顔に萌え、私はたった数秒で彼が好きになった。
 最初の印象と同じで、彼は限りなく優しかった。その優しさによりかかり、わがまま放題に過ごした私は、と言うか二人は、卒業と同時に憑き物が落ちたように別れた。今思い出しても惜しい気がするが、流れでそうなったのだからしょうがない。
 キャンプファイヤーの、炎の魔法にかかってしまっていたのかも知れない。

11/20/2024, 3:57:46 AM