「だれのおはか?」
「お兄ちゃんのお墓だよ。」
大きな供花を抱えたむすめが不思議そうに墓石をのぞき込む。
今日は、話すこともまともに会うことすらもできなかった息子の七回忌だ。
私の身体は、中々恵まれていなくて、何年も治療をして、
息子がやっと来てくれて。
小さい頃から子供が好きで、結婚したら絶対に赤ちゃんが欲しいって
思っていて。
順調にすくすく育ってくれて、もうすぐ会えるって。
名前も服もおもちゃも、たくさん準備して。
予定日の前日。少し早く陣痛が始まって、
私は産声も聞くことなく、呆然とじんわりと温かい息子を抱いた。
実をいうと、今回初めてお墓参りに来ることができた。
この時期になると、どうしてもあの時のことを思い出して。
辛くなってしまうから。
視界がぼやけてしまう前に、掃除をして、花と線香を供える。
むすめは私のそばで何も言わずじっとお墓を見ている。
むすめは、実の娘ではない。
私の身体は、息子の一件から子どもを授かることができなくなってしまって。
むすめは、実母の年齢などが理由で私たち夫婦の子どもになった。
血が繋がっていないからって、どうということはないのだけれど、
この子が、この事実を知るまで、望むなら知ってからも、
家族として過ごせるように。
この子の成長を見逃さないように。
まだ、ふくふくとした手をやさしく包み、
「夕飯どうする?」
あと何回、この子に聞けるだろうか。
3/28/2025, 5:00:01 PM