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7/9 (日)「私の当たり前」

ソレは僕にとって当たり前だった。呼吸をするのと同じ様にごく普通のことだった。ソレが普通でないと気づいたとき、僕は独りだった。
知人からは距離を置かれる。
大人からは異常者を見る様な目で見られる。
親からは冷たくあしらわれる。
兄弟からは気持ち悪がられる。
どれもこれも、僕が普通じゃなかったせいだ。

だから私は、ソレに気づいてからは普通になろうと努力した。
対して面白くもない会話に相槌を打ち、
微塵も興味のない音楽を聞き、
全く好みでない服を着て、
皆と同じになろうとした。
たちまち私の周りは普通の物でいっぱいになった。でも私の心は決して満たされなかった。

でもね、普通になってからは皆優しくなったの。
話を聞いて貰える様になったの。
私を見てくれる様になったの。
笑顔を向けてくれる様になったの。
私と遊んでくれる様になったの。
それらは、私が普通になったからなの。私が普通になっただけで、世界は百八十度変わったの。

でもね、それと同時にちょっぴり皆が羨ましくなっちゃった。生まれたときから普通で、皆から普通に接してくれて、普通であることを肯定されて。
いいなぁ、ずるいなぁ、羨ましいなぁ、僕も普通に生まれたかったなぁ。

でも、昔は普通じゃないだけで捕まえられたりしたくらいだから、今の時代は、文字通り生きやすい世の中なんだろうなぁ。

、、、あぁ、でも、僕の心はとっくに死んでるんだよなぁ。

7/9/2023, 10:57:20 AM