やまんば

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 小さい頃から大人になりたかった。それなのに、いくつ歳を重ねても自分は大人にはなれなかった。大人という定義に自分はもれなく当てはまっているのに。
「自認が大人な人なんていないよ、大人って言葉は相手に使う言葉なの」
 そう言う友人はひどく大人で、私とはまるで同い年でなかった。ハイボールは相変わらず苦い。
 友人の話を聞きながら少しずつ大人の輪郭が見えてくる。少しずつ、少しずつ悟ってゆく。
 何かを許したり許されたり、何かを失ったり得たり、そういう繰り返しの果てに大人がある。
 それに気づいた瞬間、幼い頃から心の中で鳴り続けていた砂時計の音がぴたりとしなくなったんだ。

/砂時計の音

10/17/2025, 3:23:29 PM