「いや、参ったなぁ……」
「どうしましょうか?」
大量のプレゼントを前に、俺と先輩は途方に暮れていた。
「まさかこの時期にトナカイ達がストライキ起こすとは思いませんでしたね」
12月の中旬を過ぎた頃、獣労働組合から全世界のサンタ事業所に通達が届いた。要約すると、トナカイに対する強制労働と違法薬物(実はレッド◯ルなのだが)の摂取をやめさせることがそこには書かれていた。
「もう飛脚かクロネコかa→zに頼みませんか?さすがに物理的に無理ですよ」
「そんなことできるか!」
先輩は荒々しく反論した。
「イブの夜にはトナカイ乗って、煙突から各ご家庭にお邪魔をしプレゼントを届けるって昔から相場が決まってるんだよ!」
先輩は先祖代々サンタを生業にしている名門出のサンタだ。いわばサラブレッド。こういう昔からのしきたりや伝統を守るのが使命だと思い込んでいる。
「先輩、お言葉ですが……」
「なんだよ」
「クリスマスイブのイブは元々、イブニングから取られたものでイブの夜って言うと二重ことばになってしまいます。焼いた焼き魚みたいに」
「それ教えたのオレだろ……、お前モテないだろ?」
「モテてたら5年連続先輩の下でこうしてサンタやってないですよ」
今年のイブは長くなりそうな予感がした。
12/25/2023, 9:36:08 AM