川柳えむ

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「お…………い…………」

 遠くから声がする。

「おー…………い…………」

 誰かを呼んでいる?
 気になって、耳を澄ませてみる。

「おー……た……い…………ん……」

 ん?

「大型類人猿……」
「『大型類人猿』」

 どういうこと?

「おー……………………い……」

 次の声はもっと長かった。
 再び耳を澄ませてみる。

「大型上陸支援艇」
「あの第二次世界大戦のアメリカの?」

 もう意味がわからない。最初からわからない。

「おー…………………………い………………」

 次の声は更に長かった。
 また気になってしまうじゃないか。

「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡」
「いや何だよそれ!」

 誰がチリの天文台にある望遠鏡を知っているというんだ。
 ていうか、何がしたいんだこの声は!

 そしてそのうち声は聞こえなくなって、ただ謎だけが残ったのだった。


『遠くの声』

4/16/2025, 2:29:51 PM