ねぇ知ってる?昔は三日月に願いを込めると、やがて満ちて願いか叶えられるって信じられてたんだよ。 すごいロマンチックだよね~! あっ絶対今しょうもないって思ったでしょ!! もぉ~夢がないな~
そんなことをコロコロと表情を変えながら 話していた君は、今どこにいるのだろうか。
君の家にも、学校にも、お気に入りのカフェにも あの三日月を一緒に見た静かな丘にも、 どこを探しても、もう君には会えない。 頭ではわかってる、わかってるのにな。
何もかも受け入れたくない僕は今日もいつもの丘 にきて、遠い遠い宇宙に浮かぶ月を眺める。 今日の月も君の名前のように美しいよ。 美月、きっと君はあの月より遠いところに いるんだね。 何十年もかけてゆっくりと、長い長い道を歩いて やっとまた、君に会える。 そう、信じてる。信じてたい。
その頃の僕は多分しわくちゃのおじいちゃんで 君は僕の大好きな笑顔で笑うんだ。 僕は失礼だぞって怒るけど、
2人とも 溢れんばかりの笑顔で笑ってる。 多分、これが幸せ。
ねぇ美月、僕を置いてくなんて、ひどいじゃないか。 ずっと一緒だよ!って言ってきたのは君なのに。 僕はこれからどうすればいいのかな。 君の居なくなった世界は、どうしてこんなにも 怖いのかな。例えるなら、真っ暗闇の水の中を 果てしなく沈んでいくような感じかな。 ただでさえ怖いのに息も吸えないんだ。 こうやって言うと君はいつも怒るんだ。 また難しい例え方して!そんなこと経験したこと ないからわかりませーん!!ってね。
それもまた可愛らしかった。 こんな他愛もない会話にも僕は幸せを感じていた。
そういえば、今日は三日月だ。
僕は叶う訳がないと言い聞かせながら、 ほんの少しだけ、三日月にわがままを言ってみる。 どうか、僕の大切な美月を返してください。 せめてもう一度、もう一度だけ会わせて下さい。
日頃からつくづく思うことを三日月に伝え、 自嘲気味な笑みをこぼす。
でも、きっとこう願ったことがある人は少なからず 存在するだろう。
叶うわけがないと、
どこかでわかっていても。
祈りを込めてもう一度三日月に願う。
また会おうね。美月。
5/27/2024, 7:34:03 AM