「雨に佇む」
一輪の花があった。雪にも風にも茹だる日差しにも屈しない花が唯一首をたおるのは、雨の日だった。どうやら大切な人を亡くした時に雨が降っていたらしい。いつも花に水をくれる人だったけれど、雨の日、それも嵐の日に、花の様子を見に来た帰り道で事故に遭ったようだ。雨による視界不良で彼が見えなかったらしい。車と正面衝突した彼は一瞬で散った。花は雨が降る度に思う。この雨に打たれて一瞬で散ることができれば、私も彼の元へ行けるのに、と。しかし雨はいつも酷く優しく、花の花弁を揺らすのだ。
8/27/2024, 2:44:22 PM