作家志望の高校生

Open App

ぺらり、とページをめくる。僕の知らない君がまた増える。また1枚めくる。僕が見たことのない、幼い君が笑っている。背景に写る海も山も、学校も。僕は、見たこともない。僕が知っているのは、所詮高校生からの君だけだ。中学生の君も、小学生の君も、保育園児の君も、僕は知らない。今生きている君を作り上げた景色を知らない僕が腹立たしくて、アルバムを乱雑に閉じて君に返した。
「ん?ああ、見終わった?」
へらりと笑うその顔は、さっき見た写真のものと大差ない。きっと、君の本質は変わっていないのだろう。
「……うん。ありがと。」
笑って返事を返す。笑顔は引きつっていなかっただろうか。幼い君も、今の君も。なんなら、未来の君さえも、僕のものにしてしまいたい。思考に暗雲が立ち込め始めた辺りで、僕は無理矢理考えるのをやめた。ベッドの上で、上機嫌に鼻歌を歌いながら漫画を読んでいる君を見上げる。雲の絶え間から差す日光が眩しくて、目を細めた。
過去の君は、もう絶対に手に入ることはない。でも、今の君は、未来の君は、手に入れることができる。君が見てきた景色をなぞりたい。君の横で同じ景色が見たい。君が見る景色を作りたい。欲深い僕は、僕の知らない過去の分、君の未来を欲しがってしまう。高校を卒業しても、大学生になっても、社会に出ても。僕は、眩しい君の影として、ずっと横で見ていたい。
雲はやがて厚くなり、絶え間から差していた陽光も潰えてしまった。

テーマ:君が見た景色

8/14/2025, 2:08:51 PM