MWの二次創作

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もしも世界が終わるなら



【巨大隕石が地球に接近中です】
 ふとテレビから聞こえてきたナレーションに、無意識に体が強ばった。
「世界が終わるってことなんかな」
 ふと呟いた声に、兄の怜が反応した。
「そうだねー。対隕石用ミサイルでもあれば、助かるのかもだけども」
「そんなSFみたいな」
「昨日ちょうどそんな感じのやつを配信で見たんだよ」
 へえ、と呟く。天然でふわふわした雰囲気の兄とSFが上手く結びつかない。
 家を出てから変わったんだね、と思う。特に家族にゲイセクシュアルでことをカミングアウトしてからは、兄の雰囲気が変わった気もする。
 いつ世界は終わってしまうのだろうか。
「ねえ、純。最後になにしたい?」
「最後……か」
 もっと兄と色んな話をしたかった。
 兄の本音を聞いてみたかった。
 二十数年も怜の弟をやっていて、そんな恥ずかしいこと、舌を抜かれても言えないから。
「崇拝する芸人さんの家に行く……!」
 リズムネタで一世を風靡したコンビ芸人の片方、チャラ男キャラの芸人の名前を挙げた。
「ほんと好きだねー」
「昨日も愛音さんに『オレのあっちゃんになってください!』て誘ったのに、断られたんだよ……」
 兄は拳を前に突き出し、武勇伝、と呟いた。
「もう兄ちゃんでもいいや。オレのあっちゃんになってください!」
「木村怜のどこに『あ』の要素があるんだよ」
 くだらない事を話し合って、笑う。幸せな時間がこの先何年も続いて欲しいと希う。
【ーーこの隕石が地球に到達するのは、およそ二百年後と予想されておりーー】
「……は?」
 思わず声が出た。兄を見ると、同じように口をあんぐり開けている。
「……なーんだ! 人騒がせな!」
 テーブルを叩くと、台所から母親の怒声が飛んできた。
 まあ、何はともあれ、明日からも世界は続くらしい。
「ところで、その芸人さんの家知ってるの? 職権乱用?」
「一テレビ局クルーにそんな権限、ある訳ないじゃん!」
 マネージャーと仲が良いことは黙っておいた。



9/19/2025, 12:37:37 AM