思いつきなんちゃって小話

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【花畑】

ここはどこだろうか。
広い花畑の真ん中で目を覚ました。

様々な種類の花が、やさしい風に揺れ、ふんわりと柔軟剤のような良い香りを撒き散らしている。


いつの日か見た夢のようなぼんやりとしためのまえの光景は、到底現実のものとは思えなかった。

『少しあるこう』

虫の羽音も、風の音でさえ聞こえない花畑に、
誰に言う訳でもない独り言だけが響いた。

花畑はずっと遠くまで続いていて、終わりが見えない。

行先もなくただフラフラと花畑を歩いた。
お姫様になった気分とでも言っておこうか。

暖かい陽射し、美しい花、優しい風、
擦れる足、踏まれた花、永遠と続く花畑

あまりお姫様もいいものでは無さそうだ。
王子様の迎えが恋しい。


そんな時遠くから声が聞こえた気がした。
「ねえ!おーーーい!おーーい」

聞こえる声に、導かれるように歩く、走る。
声の聞こえてきた方向へ向かうと、ポツンと扉が立っていた。

1枚の扉。

開ければ向こう側が見えてしまうだけなんじゃないかと思うような扉。

『不思議だ』

そう言いながら、何となくドアノブに手をかけた。
軽い握り心地に、ドアノブだけ外れてしまうのではないかと不安になりながら、ドアノブを回した。

扉を自分の方へと引いていく。
途端に眩い光が溢れ出し、今居た世界を、花畑を飲み込んだ。



音が聞こえる…
ピッ…ピッ…と、規則正しくなる機械の音。

口を覆うプラスチックの感触。

真っ白な天井と淡い緑のカーテン。



あぁ、あの花畑は…。

9/18/2023, 3:33:48 AM