木枯らしに乗って楽園の匂いがここまで届いた。
(あと少しで楽園だ)
足取りが軽くなる。
しかしどういう訳か、歩けど歩けど楽園にはつかない。
そしてついに果てしなく禿げた荒野に出てしまった。
荒野に目を凝らしても、どこにも楽園は見えない。
おそらく楽園は、先程の木枯らしだったらしい。
風と共に去ってしまったのだ。
まるで俺は遊ばれているようじゃないか。
移動生楽園の補足に、またもや失敗した。
寂しすぎる荒野へ叫びたくなった。
白いため息を漏らしてから、クルリと踵を返して、
残りの体力で楽園の足跡を辿っていく。
____
木枯らしが吹いた。
(この大迷宮の中で、木枯らしだと!?)
「三日三晩飲まず食わずでろくに働かない脳を働かせて考えろ。吹いたのは、風の通り道があるからだ。それは入口から出口までだろう。吹いたのは入口の方向じゃない。あれ?入口の方向から吹いた、入口の反対の方向へ吹いて行った。入口の反対の方向ということは、出口ということだ。私は出口を目指しているんだろ?確かそうだから、
枯れ葉の流れていくのをたどれば、出口にたどり着けるということだろ!」
私は最後の力を振り絞って枯れ葉を追いかけていった。
足が回らなくなると這った。
いいんですか、こんな残酷なことして。
騙されたのは彼だ。彼は適正でなかった、
それだけだろう。今は夏だぞ。
1/17/2024, 11:44:35 AM