「僕は思うんだ。勝ち負けなんて下らないもの、気にする方が馬鹿だ」
「レースゲーム三連敗の言い訳はそれで終わり?」
君は、人生で一度も敗北なんて経験したことがないような透き通った瞳に僕を映した。
【勝ち負けなんてどうだって】
「違うよ、真剣に言っているんだ。世の中の人がみんな勝ち負けなんて気にしなければ戦争なんて馬鹿なことは起こらない」
「話が壮大になったね」
「勝ち負けの概念がなければ、負けることによって生じる全ての悲しみも生まれずに済むんだ」
「勝つことで生じる喜びも生まれないけどね」
「喜びはいいんだよ、別のことで補填できるから。例えば僕は君と出かけることができれば行き先はゲームセンターじゃなくて映画館でもよかったし、君にゲームで勝つ喜びなんて最初から求めていないんだ」
「そういえばこれ、負け惜しみだったね」
「だから違う!!!」
負けを繰り返した僕はもう君の顔もまともに見られない。恋愛は惚れた方が負け、なんて誰かが言うから。
「本当に勝ち負けが下らないと思うなら、素直に私が好きだって認めればいいのに」
「それも違う!!!」
本当、勝ち負けなんて君が勝ち誇るためだけにあるような厄介な概念、なくなればいいのに!
6/1/2025, 9:43:11 AM