小説家になりたい一般人。

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『日の出』

冷たい、ひんやりとした風がふわりと一風、温もりを持った頬をかすめる。

「さむっ…」

そう言う、鼻の赤いトナカイのような彼女はとても可愛らしく、僕にはもったいないくらいだった。
赤い鼻の彼女に、僕は羽織っていた上着を取っては彼女にふんわりと羽織らせた。すると彼女は驚いたような顔をしたあと、優しく微笑み僕に優しくこう言った。

「ふふっ…ありがと!」

「…どういたしまして、早く陽、出るといいね」

「…そうだね〜」

そんな呑気な会話をしていると、ゆっくりと東の方から光が出てくる。

「あっ!太陽!」そう喜ぶ彼女を見ては、僕も再度東の方へ目線をやり、「ほんとだ」と目を輝かせた。
ゆっくりと太陽が昇っている時、僕ら以外に東を見ていたみんなはスマホをポケットから出してはカメラを東の方へ向けた。中にはピロンっと録画音を立てる人も。

「ね、私達も写真撮ろ!」

「そうだね、撮ろ!」


そう言って、僕らはみんなと同様スマホを取り出し、東へとカメラを向ける。
ふふ、と微笑んだ時に出る息は太陽から出る光のおかげか、白く見えた。

太陽が昇り始めて体感数十分、僕らの周りに居たみんなは満足したのか「綺麗だったね〜」と感想を各々呟いては太陽に背を向けた。
そんなみんなにつられ、僕は身体ごと彼女の方へ向かせる。すると彼女も身体ごと僕の方へ向かせ、僕から話を振りかける。

「…僕らも帰る?」

「そうする…さすがに寒いや…」

そう言ってにへっと笑う彼女に僕は「可愛い」という感情が爆発しそうなほど心臓を鷲掴みにされる。

「っ…」

あぁ、耐えられない。どれだけ可愛いんだきみは。

そう思い、息を飲み、彼女の顔の頬に手を添え、彼女の顔に僕の顔を近づける。
そして、目を瞑り、唇を重ねる。

唇を重ねて数秒後、僕の唇を彼女から離し目を開けると彼女はポカーンとした、間抜けた顔をしていた。
そんな顔に僕はうっかりと笑みが溢れる。

「ふふっ…」

「……っえ…な…」

やっと喋った、と思いきや頬を赤らめながら吃る彼女。

「…っもう!いきなりはだめだよ!?」

「んっふふ、ごめんってば」

そうやって戯れ合いながらも、太陽に背を向け我が家へと帰るのであったーー。

1/3/2024, 2:04:13 PM