お友達が関西弁で書けって言ってきました!
リクエストには答えるタイプ
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『好きだよ』
放課後の教室。
西日が差し込む中、俺とあいつだけが残ってた。
「なあ、今朝の数学の課題……まだやってへんの?」
あいつ――千紘(ちひろ)は机に突っ伏して、ぐうたら声で答えた。
「やってへん、ってか、もう無理やろ。提出終わったし」
俺は笑いながら、プリントを見せてやる。
「ほれ、写してもええぞ、今日だけな」
「お、優しい。やっぱ好きやわ~」
「……ほんまに適当やな」
冗談めかして言うその「好き」は、何度聞いても心臓にくる。
ほんまは、俺も――
「なあ、じるってさ、好きな人とかおるん?」
急に真顔になって、千紘が聞いてきた。
俺はうまく言葉が出んくて、机の隅っこを指でなぞる。
「おるよ」
「へえ~。誰?」
沈黙。
ほんまは、このタイミングで言えたらええのにって、何度思ったことか。
けど、今日は――
「千紘やで」
その瞬間、窓から風が吹いてカーテンがふわっと揺れた。
千紘の目がまんまるになって、そして、ふっと笑った。
「……あは。そっか。実はうちも、ちょっとそんな気してた」
頬を赤くして、いつものふざけた声じゃなく、少し震える声で言った。
俺はそっと、もう一度言うた。
「好きだよ」
それからしばらく、ふたりとも黙ったままやった。
教室の中は、カーテンが揺れる音と、遠くから聞こえる部活の声だけ。
千紘がゆっくり立ち上がって、俺の机の前まで来た。
「……ほんまに、うちでええの?」
照れくさそうに言うその顔は、いつもの元気な千紘やなかった。
俺は、まっすぐ目を見て、うなずいた。
「ええよ。てか、千紘がええんや。昔からずっと」
千紘は一瞬だけ驚いた顔して――それから、ふわっと笑うた。
「そっか……ほんなら、ちゃんと言わなあかんな」
心臓の音がうるさいくらい響く中で、千紘の口からこぼれた言葉。
「うちも、好きやで」
たったそれだけで、世界が少し明るくなった気がした。
なんてことない教室が、映画のワンシーンみたいやった。
「なあ、じる。付き合うとかって、どうしたらええんやろな」
「知らんけど……まあ、まずは放課後一緒に帰るとこからとか?」
「そんなん、今からでもできるやん」
そう言って千紘は、俺のカバンをひょいと取って廊下へ出た。
「な、はよ来ぉへんかったら置いてくでー!」
俺は慌てて後を追いながら、思った。
ああ、これが「始まり」なんやって。
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4/5/2025, 11:41:52 AM