ふと時計を見ると、時間は日付が変わるまで1時間をきっていた。私はそれに気付くとスマホの電源を落とし、机の引き出しから砂時計を取り出した。
この砂時計は、数年前に旅行先で見かけて購入したものだ。砂が入っているガラスには、海に関するイラストが可愛く散りばめられていて、それが気に入っていた。
そして気付けば、1日に1度は砂時計をひっくり返し、砂が落ちきるまで何もせずに過ごすのがルーティンとなっていた。
砂が落ちきるまで、ピッタリ5分。
私は砂時計をひっくり返して、それから机にうつ伏せになり、目を閉じる。
初めに聞こえるのは、やっぱり砂の音。
サラサラサラ、と耳に心地よく流れていく。
それから、換気扇の機械的な風の音。
寝る前に切らないとなぁ、なんてぼんやり思う。
次に、外の雨の音。
どうやら小雨がいつの間にか降っていたらしい。
遠くでカエルの声も聞こえる気がする。
人工の音と、自然の音。
そしてその中間とも言える砂時計の音。
音に包まれているこの5分間だけは、現実の悩み事から遠ざかり、ただ音だけに集中していられる。
自分の身近にある音はいつもはここまで意識して耳に入り込んでこない。だからこその、特別な時間。
サラサラサラ…と砂が落ちきり、聞こえなくなる。
そこで私は、ゆっくりと目を開く。
あっという間の優しい時間。私にとって、必要な時間。
砂時計を引き出しに戻して立ち上がる。
明日はどんな日になるのかなぁ、なんてぼんやり考える。
外では小雨がかすかな音で降り続けていた。
10/18/2025, 12:20:52 AM