まだ知らない君
君は眠っている。部屋の真ん中に敷かれた布団の中で、いびきをかくことなく、寝息をたてながら。どんな夢を見ているのかわからない。時折、笑っていた。
私はそんな君の頬に手を押し当てた。
もにゅ、という音がした気がした。肉球とは想像以上に柔らかかった。
夜勤から帰る途中だった。月が輝いたかと思ったら、身体が小さくなっていた。いや、正確にいうのなら。
猫になっていた。
家まであと少し、そして鍵の掛けない不用心な君のおかげで、なんとか帰宅することはできた。そして朝の情報番組でやっていた。何万もの人間が突然、猫になったと。
君は眠っている。
まだ何も知らない君。
目覚めた時、果たして僕だと気づいてくれるかな。
1/30/2025, 8:22:20 PM