霜月 朔(創作)

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水たまりに映る空



ずっと憧れだった君は、
まるで初夏の空の様に、
眩しくて。

君は爽やかに笑う。
でも、その笑顔は、
友達である俺に向けた、
信頼の微笑み。

友達で居られるだけで、
俺には十分過ぎるんだから。
そう、自分に言い聞かせ、
胸の痛みを隠して、
微笑み返す、そんな毎日。

雨上がりの街を、
何かから、逃げる様に、
俯き、足早に歩く。

こんな俺には、
空は余りに眩し過ぎて、
顔を上げる事さえ、
烏滸がましいから。

俺の視線の先には、
濡れた道と水たまり。
初夏の日差しに、射抜かれ、
七色に輝く、夏の欠片。

水たまりに映る空は、
あんなに澄み渡り、
青く輝いてるのに。
俺の心の空は、
今にも泣き出しそうな、
鈍色の曇天。

空からポツリと、
落ちた雨粒が、
俺の頬を濡らした。

6/6/2025, 7:33:28 AM