『秘密の場所』
休日の早朝、まだ寒い中車を走らせる。山際の小高い空き地まで約10分。車を降りて見下ろすと、まだ雪が残るたな田に今日もエサを食べる白鳥がいた。
こんなに白鳥を間近に見られる場所が近くにあるとは。
ここを見付けて以来、私は休みの度にこの場所へ通い続けていた。
ところが今日の白鳥は何かが違った。いつもより数が異常に多い。50羽…いいやまだそれ以上いるだろうか。そして皆鳴きながら、何故か一斉に右を向き一例に並び始めた。
突然、先頭の5羽が助走をつけて勢いよく飛び立った。
5羽は上空でぐるりと旋回すると、綺麗に等間隔を保ちつつ遠く小さくなっていく。それに続く様に残りの白鳥達も5〜10羽のグループで次々に飛び立つ。
やがて最後のグループが舞い上がると、暫く空から鳥達の、この地を離れることを名残り惜しむ様な声が響いた。
私は白鳥達を見送りながら、これからの旅路の無事を願った。
3/9/2025, 11:01:47 AM