Sasha

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「こっち空いてるよ!」 

彼女に言われるまま、俺は東海道線のボックス席に座った。向かい合わせになると、どうしても膝がふれ合ってしまうのが、面はゆい。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、彼女は無邪気に駅弁の包みを広げた。

「え、いま食べるの?」

「だって、着いたらすぐに移動しないと、日没の時間に間に合わないよ?」

彼女は言うやいなや、駅弁の煮しめを美味しそうに頬張った。

「ああ…いやそうじゃなくて。ってか、さっき駅でお蕎麦食べたばっかりじゃなかった?!」

「そうだよ?」

悪びれず、ご飯を口に入れていく。

俺はこのとき、はたと気が付いた。よく考えると、彼女は昨日からずっと、1日5食のペースで食べているではないか。

最初は、てっきり無邪気な女の子を印象付けるためにやっているのかと思っていた。

しかし、そうではない。これは、彼女にとって当たり前のペースなのだ。

つまり、彼女は大食いチャンピオン並みの胃袋を持った女性ということだ。

俺は思わず、財布の残高を確認した。食費は、持つだろうか?!

【向かい合わせ】

8/26/2023, 1:33:06 AM