「ね、一緒にお星様見に行こー!」
と隣にいた桃色の小鳥が囀った。
突拍子のことで思わず眉を顰めたが、突拍子のないことはいつものことかと小さく溜息をつく。
「……寮に戻る時間だ」
時刻は既に九時を回っている。規則を破りたくなければ寮に戻り、眠る準備をした方が良いだろう。
「そっかー。じゃあ、一人で見てくるね」
と囀って隣にいた小鳥は飛び立っていく。どことなく浮き足立ったその後ろ姿を暫し眺めた後、私は再び溜息をつき「待て」と静止の声をかけた。
飛び立った小鳥は少し離れた所で立ち止まり、不思議そうに小首を傾げながらこちらを見ている。
「気が変わった」
読んでいた本に栞を挟み立ち上がる。
「一緒に来てくれるの?」
いつの間にか傍に戻った小鳥が嬉しそうに囀った。
「気が変わったと言っただろう」
「やった! お星様たくさん見ようね。あとあと星座も見つけて、それで」
「飽きたら帰る」
「なら飽きられないように綺麗なお星様を見つけないとな〜」
ふふふ、と隣でご機嫌に小鳥が囀る。
普段の囀りとはまた少し違うその声色を不思議に思いながら、空に浮かぶ"星"と呼ばれるそれを私はぼんやりと見つめ始めた。
10/6/2024, 3:26:50 AM