同情
「俺は精神的にも肉体的にもアイツを傷つけちまった。
だから、どうすればいいのか分からねえんだ…」
サンドラとロード、凱に説得されて少しだけカイの部屋に行くことに前向きになった三四郎がポツリと呟いた。
「俺が自分に向けた苛立ちとか不甲斐なさを、カイは自分への同情だと誤解してて。…アイツ、同情されるの死ぬ程嫌いだろ?エムパスで感じ取るからきっと疑ってない。
俺も言葉で伝えるのが下手だから何言っても信じてもらえない気がする」
三四郎らしくない弱気な言葉にサンドラとロードはお互い目を見張って確認しあう。
ずっと、彼ら二人の雰囲気を見守ってきた夫婦はその言葉を聞いて微笑んだ。
「三四郎、何を言ってもムダだと思っちゃダメ!
確かにエムパスは素晴らしい能力だけれど、そこに甘えてないかしら?
カイにはカイの真実があるように、三四郎には三四郎の真実があるでしょ。それが同じものとは限らない。
どんなに下手でも拙くても、自分の言葉と気持ちでカイに言わないと本当の意味で彼に伝わらないわよ」
「サンドラの言うとおりだ。
エムパスはカイから見たフィルターなんだ。とても便利だけどいつも正しいかと言われるとそれは違う。
三四郎、カイは君を拒否しているんじゃないんだよ」
「…そう、なのか?」
不安そうに、しかし少しの希望を見出して三四郎の声のトーンが明るくなる。
そんな三四郎の背を押すように3人は力強くうなづいた。
「どんな事でもいいから言葉にしてカイに話す。
それが仲直りの一歩です。真剣に話せばちゃんとカイに伝わります。
エムパスであろうと無かろうと気持ちを届ける意思を見せなければ関係は変わりません。その努力はきっとカイも感じ取るはずです」
ようやくカイの部屋へ行く気になった三四郎を励まし、送り出した3人はホッとひと息ついた。
「結局のところ、三四郎の気持ちの問題だね。
カイは三四郎を完全には突き放せないからね」
「私たちの同情と三四郎の同情はカイにとっては意味が違う。カイは三四郎と対等で有りたいから同情されるのが嫌なのね」
「どちらも相手に対して素直になれないところが問題を大きくしてしまうのでしょう。
アドバイス通りにすればすぐに結果はでますね」
すったもんだを繰り返すはた迷惑なバディに思いを馳せながら、3人はゆったりとしたブレイクタイムを過ごすのだった。
2/20/2024, 4:14:33 PM