軌跡 風と です
軌跡
僕が今まで歩んできた軌跡を振り返ると
楽しかったことより、辛かったことの方が多かったように感じる。
勉強も運動も人並みで、得意なこともなく、ただただ平凡で…。
そんな人生を歩んできた僕だけど、幸せな出来事が起きた。それは、僕を好きだと言ってくれる人が現れたこと。
それまで、暗い道を歩いていたような人生だったけど、一気にバラ色へと変わる。
他人から面白味がない。そう思われていたとしても、真面目に生きてきて良かったな。
心からそう思えるほどの奇跡に出会えたことに、僕は感謝したのだった。
風と
そよそよと吹く風に乗り、桜の花びらが空に舞う。
「キレイだね」
桜の木の下で空を見上げるキミは、うっとりとした表情で、それを眺めていた。
「そうだね」
空を埋めつくすほど空を舞う桜。その圧巻の風景をキミの隣で見ていると
「キャッ」
とキミが声を上げる。
「どうし…」
理由を聞くまでもなく、キミがかぶっていた帽子が、空に舞っているのが視界に入った。
「あ、待って」
帽子を追いかけ、舞う桜の中に飛び込むキミ。必死になって帽子を追う姿が、僕には、桜の花を身にまとい、風と遊ぶ妖精のように見え、胸の鼓動がドキドキと騒ぎ出す。
「捕まえた」
舞った帽子を手に持ち微笑むキミがあまりにもキレイで、思わず僕はスマホを取り出し、シャッターを切ったのだった。
5/2/2025, 7:50:29 AM