テーマ 忘れたくても忘れられない
「「「「王様の子だ!王様の子がやってくる!」」」」
「城下町に来てくれるの?」
「ぜひ挨拶してみたいわ」
「しかしなんでわざわざ城下町に来るのでしょうね」
「「ねー」」
城下町の民衆がワイワイと話している。
「どうしたのですか?」
使用人の一人が王様の子供、僕に言う。
「..なんでもないよ」
ニコッと僕は答える。
「...そうですか、何かあったらお申し付けください。」
使用人はパタンと扉を閉めた。
「..用もなく城下町へ行ってはいけないのですか?」
王様の子、その肩書だけで人が集まってくる。
でも、その人達は
僕自身を見てくれない。
ただ、
"王様の子"という所しか見てくれない。
「どうして、どうして、どうして」
頑張っているのは、
「さすが王様の子」
違う、違う、そう言われたいわけじゃない。
「この僕を見てくれよ...」
綺麗な部屋でその声が響いた。
「..君ひとり?」
母上やお父様に隠れて外へ出た。すると少年が話しかけてきた。
「..そうだよ」
「へぇ〜じゃあ一緒に遊ぼ!」
こんな子初めて見た。いつもは、
「何してるの?」
「...王様の子がどうしてこんな城下町に?」
「少しがてら散歩に」
「王様の子は忙しそうなので僕達は去りますね」
「..!」
違う、違う、ただ僕は一緒に遊びたかっただけなのに。
「いいよ。遊ぼ」
そう言い、僕達二人はたくさん遊んだ。
「明日も遊ぼ!」
「..うん!いいよ。」
身分関係なく遊んでくれるのが嬉しかった。
あの子と遊ぶために待っていたある日、
待ち合わせ時間を過ぎてもあの子が来なかった。
「速報だ!子供が死刑だって!」
「何をしたんだ?」
「王関係のことらしい」
「やっぱり王様達こわいな」
「「ねー」」
「..!まさか」
僕は走った。その子供が死んでしまうというところで。
「..なんで」
知りたくなかったが、あの子が立っていた。
「..!あ!来てくれたの!」
元気なあの子、あの子の笑顔の裏には悲しみが入っている気がする。
「..どうして」
「僕のせいだから気にしないでね!」
何故か元気な笑顔であの子は死んだ。
「..あんな子と遊ぶからいけないんですよ」
家来や使用人から声が聞こえた。
「王様の子にはちゃんとしてもらわないと」
うざい、うざい、うざいったらありゃしない。
「もう、王様の子は嫌だ」
部屋にそんな言葉を吐き捨てて、
この国から僕は去った。
おわり
10/17/2024, 10:59:28 AM