アリア

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あの日もこんな雷が鳴る雨が凄い日だった。

仕事が終わり家に帰る。
ただいま~と家族が居ないのに声をかけて部屋にいるだろう愛犬のところにいく。
「…え」
そこには元気よく鳴いて出迎える愛犬の姿はなく変わり果てた姿で私は茫然とした。なんで、どうして。
あぁ、そうだ今日はこの子の嫌いな雷が鳴っていた。
「電話…お母さん…お兄ちゃん…」
震える手で携帯を手にして電話をかける。
母は祖父が癌で入院をしていたから今日はその見舞いで私は仕事があるからと昨日おばあちゃんの家から帰ってきて、朝普通に行ってきますと愛犬に声をかけたばかりの事だったのだ。
コール音が途切れはいと声がかかる。
「おかあ、さ」
「…どうしたの?」
「いま…家、帰ってきて…小屋で…死んで…」
「えっ…」
「今日雷だったから抜け出そうとしたのかもっ…どうしようっ体冷たいっ」
小屋の柵の間に首が挟まってる愛犬に私はパニックだった。病院?いやもう間に合わない、だっていつからこうなってたの?死後硬直してるのに。
「ちょっと待って今病院だから…またかけ直すから待っててね!」
「…うん…」
虚しくツーツーと音が響く。
とにかくこのままじゃ駄目だ、グッと涙を圧し殺しなんとか愛犬を救出する。すると再びコール音。
はい、と出ると大丈夫かと兄の声。
私は涙が出た、兄の前では泣いたことがあまりない。兄と妹、性別が違うからか大きくなるにつれ話さなくなっていった事も原因だろう。
「今どんな感じだ」
「首吊ってて…救出して…」
「…おう」
「…隣に病院あったけど…もうムリかな」
「毛布くるんで一応いっとけ」
「わかった…」
兄も動揺をしてる、この子は兄にも懐いていた。この子が小さい時から一緒だったから。
「…ねぇお兄ちゃん…人生に永遠なんて、ないけれど…まだ生きてて欲しかった…」
兄からの言葉はない。
それはそうだろう、あまりにも突然すぎる。
それにきっと兄も泣いている。
「行ってくる…」
「おう…気を付けてな」
私は電話を切ると鍵をするのも忘れ隣の動物病院にと急いだ。そして結果は案の定。
突然の別れに息が苦しい、途中様子を見にこの子の兄弟を引き取った家族も来てくれ母も急いで帰ってきてくれたが1人で見た光景は衝撃すぎて頭に会話が入ってこない。
病院の先生が入れてくれた段ボールに入る君を見て
ごめんねと呟く私を家族が泣きながら抱きしめて見ていたのをよく覚えている。


そしてあの日から私は雷が怖くなり犬を飼わなくなった。


お題 【永遠なんて、ないけれど】

9/28/2025, 8:02:18 PM