奏桜希夜

Open App

ブブッ

LINEの返信が来るたびに僕はメッセージを開いてしまう。
あぁ…前はそんなことなかったのに。

『ねー聞いてぇ……』

そんな一件から始まる会話を僕は最近の楽しみにしつつある。彼女からの話題はいつも止まらない。
けれど、お互い部活や学校が違うため時間が合わないから長期間の会話になることが多い。

いつもこれで終わらないで……と少し思いながら返信していることは内緒だ。

『今日はどうしたの?』

『後輩ちゃんがさ、彼氏が出来ましたーって言って紹介してくれたの』

『この前告白してきます!って言った子?』

『そう!!!けどその彼氏くんがさぁ……』

以前話題に出た彼女の後輩の話だった。告白とか、彼氏…とか、好きとか。
キーワードにドギマギしてしまって我ながらピュアすぎるなと思ったりする。

『めっちゃいい子でね??キラキラの空気で…』

『じゃあ送ってきまーすっていって出てったんだけど、ピュアな空気に触れて胸キュンした』

『かわいーね笑』

そんな彼女が可愛いなと思いながらも、僕は返信する。え、この笑。きもっとか思われないよね…?

『キュン🫣』

普段絵文字を使わない彼女が送るときは大体照れ隠しのときが多い。間違えてなかった…とホッとして僕は続きを打つ。

『彼氏とか欲しくなったの?』

これでいらないとか言われたら今じゃないと思おう。そうその先を予想しながら言葉を紡ぐ。
1分経った頃彼女から返信がきた。

『ウン…でも私が好きで、相手のことを私が大事にできる人がいいなぁ…とオモイマス』

何故かカタコトで可愛いことを言う彼女にニヤケが止まらない。
あー電車なのに…絶対やばいやつって目で見られる……

『きみは…?』

チラッというスタンプとともに送られてきた言葉に僕は少し嬉しくなった。
聞かれるってことは、少しは僕に興味あるってことだよね??じゃなきゃ残酷すぎるよね?

心臓をかつてないほどならしながら返す。

『おなじかも。でも僕、彼女になってほしい子がいるんだよね』

既読がついて、返信が来ない。やばい、胸痛い…

『…え!?だれ??』

だよね、そうくるよね。逆だったら僕もそうなる。でも君は直接言ってほしいタイプだったよね?
どうしよ…ってうそだろ。僕は目を見開いた。

ー次はー想咲ー想咲ーお出口はー右側ですー

そんなアナウンスが流れ扉が開いたその先に、彼女はエスカレーターに乗ろうとしていた。

あぁ、きっとそういうことだよね?神様いるのか知らないけど、多分今日は僕の味方だ。てかなってくれ。明日からめっちゃいい子になるから。

「……ねぇ久しぶり」

トンと彼女の方に手を乗せ声を掛ける。すると彼女は驚いたようにこっちを見た。
あぁ…やっと会えた。

「っびっくりしたぁ…ひさしぶりぃー!!会えて嬉しい」

笑顔で返してくれる彼女につられ頬がゆるむ。流れに乗って一緒に帰る。

「ねぇ…言いたくなかったらいいんだけどさ…さっきのLINEの好きな人って……?」

彼女から出た話題に僕の心臓はまた大きく動き出す。ほんと、明日死ぬかもしれない。
でも、ここが踏ん張りどころ…だよね?

僕は意気地なしだけど、攻めどころは間違えたくない。だから、お願い。そう君の手を取って言った。

「4年前からずっと

『「大好き」』



電車に乗ってる仕事帰りのサラリーマン

『えーー絶対あそこの2人付き合う寸前じゃん……うわっ青春だぁ…つかれた目に染みるな……』

キャリアウーマン

『え、めっちゃかわいい。絶対告白してるよね??手繋いじゃってるんだけど……繋ぎ方慣れてなさすぎて可愛い。まじかわなんですけどぉ……毎日会いたいわ』


#1件のLINE

7/11/2024, 12:34:37 PM