玄関ドアを手前に引き、ワンテンポ遅れてただいまと声を掛ける。部屋の奥から微かに聞こえるのは、鳴っては消える楽器の音。生憎、私の耳は絶対音感を持ち合わせていない。音から楽器を推察する能力も。
おかえり、という声とともに音が再び鳴ることはなくなった。
彼女は仕事の傍ら、パソコン一つで楽曲を作り動画投稿サイトに投稿している。その制作過程を聞くことができ、また完成した楽曲を真っ先に聴くことができるのは同居人である私の特権だ。
初めて彼女の曲を聴いたとき、私はどうしようもない感動を覚えた。音の一つ一つの粒立ちが、まるで夜空に輝く星々のようで。彼女の手のひらには確かに宇宙が広がっている。
1/18/2025, 4:42:11 PM