世界に一つだけのもの
それを探しにボクは旅に出た
住み慣れた故郷を離れ
道なき道の森を抜け
右も左もない草原を過ぎ
暑い日も寒い日も
雨に打たれ強い風に向かって
ただ歩き続けた
色んな人に聞いても誰も知らない
世界に一つだけのものなんて見当もつかない
そう言って物珍しげにボクを見ては嘲笑う
いつしかボクは疲れ果て
そんなものが存在するのかどうか疑わしくなって
ここで最後にしようと人伝に聞いた賢者を尋ねた
賢者は言った
もうあなたは答えを見つけている
ここに用はないはず
故郷に帰りなさいと
ボクはまた長い年月をかけて故郷を目指した
いくつもの夜を明かして、ある日の朝、
ボクは懐かしい我が家に帰ってきた
父や母は腰が曲がって歳を取り
兄弟はすっかりシワが増えた大人になっていた
再会を喜び
世界に一つだけのものはとうとう見つからなかったと話そうとしたら
ボクが帰ってきたと知った幼馴染が駆け込んできた
幼かった彼女は大人の女性になっていた
彼女はずっと旅に出たボクを待っていたのだ
怒りながら泣いている彼女はそれでもボクを許した
息を呑むほどに美しい彼女の瞳を見て
ボクはやっと探していたものを見つけた
世界に一つだけ
それは愛
見つけるのが困難で遠回りしたけど
ボクはとうとう愛を見つけた
誰もが愛を探していて迷子になる
遠回りしてもいい
いつか分かる時がくる
愛とは許すこと
それが世界に一つだけのもの
4/4/2024, 9:10:16 AM