【お題:空模様 20240819】
「まどかちゃん、これあげるよ」
「わぁ、きれいなお花。たつきくん、ありがとう」
あれは確か最近流行りの摘み細工だったか。
昔は簪とかによく用いられていた伝統工芸で、今は趣味で作っている人も多いとか。
たつきくんのお母さんもハマっていて、作ったものをフリマとかで売っていると言っていたな、確か。
ピンクと白の花の付いた髪飾り。
簪じゃなくて、クリップ型だから使いやすくて良さそうだ。
「まどかちゃん、これ僕からのプレゼント」
「わぁ、可愛い。そうたくん、ありがとう」
あれは編みぐるみってやつだな。
確かかぎ針とかで編むんだったか、昔姉ちゃんが挑戦してたやつだ。
技術があれば色んなキャラクターを編んだり出来るって話だったよな。
アレも、某女の子向け番組のやつかな。
白い兎と、ピンクの熊の編みぐるみをキーホルダーにしたのか。
そうたくんのお母さんは手先が器用だからな。
いつも着ている服とかも手作りって話だし、デザイナー目指してたとか言ってたな、そう言えば。
それにしてもまどかちゃん、モテますねぇ。
今日がまどかちゃんの誕生日なのもあるけど、彼女の周りには男の子も女の子も集まってくる。
可愛いし、いい子だし、わかる気はするけど⋯⋯っと?
「お花の方が好きだよね、まどかちゃん」
「ぬいぐるみの方が好きでしょ?まどかちゃん」
おっとぉ?
たつきくんとそうたくんの間に広がった険悪な空模様。
暗雲立ち込め、雷が鳴り出すか?
って、そんなこと言ってる場合じゃないか。
ふたりが喧嘩しないようにしないとなぁ。
さて、どう、おさめようか。
「まどかね、お花もぬいぐるみもどっちも好きだよ」
「え⋯」
「でも」
あ、うん、たつきくんもそうたくんもどっちかに決めて欲しいんだよね、きっと。
「だって、どっちも好きなんだもん。ダメ?」
うわぁ、下からの上目遣い。
しかも小首を傾げてって、まどかちゃんどんだけ小悪魔なの!
「だ、ダメじゃない」
「う、うん。まどかちゃんなら、いいよ」
うん、そうだよね、ダメだなんて言えないよね。
惚れた弱みってやつだよね。
「あ、あのね、まどかちゃん。まどかちゃんは誰が好き?」
「ぼ、僕はまどかちゃんが好きだよ!」
おっ、そうたくん言ったか!
たつきくん、どうする?
「僕だって、まどかちゃんが好きだよ!そうくんよりも好きだもん!」
「ぼ、僕だって!」
男の子ふたりが睨み合い。
普段はすごく仲がいいふたりなのに、まどかちゃんが絡むと喧嘩するんだよな。
ふたりとも、好きな子の前での喧嘩はダメだよ。
怖がらせちゃうよ、ほら、まどかちゃんも⋯⋯って、あれっ?
まどかちゃん、口が薄っすら笑ってる?
「ありがとう。まどか、そうたくんもたつきくんも好きだよ」
「本当に!」
「やった!」
「うん。それとね、まどかはね、ケンジ先生が大好きなの!」
えっ、俺?
⋯⋯あ、え、そうたくんもたつきくんも先生のこと睨むのやめようか。
あー、まどかちゃんも、このタイミングで先生に抱きつくのはやめようか。
「モテモテじゃないですか、ケンジ先生」
え、ちょっ、百香、いつの間に後ろに居たんだよ。
あれ、百香さーん?まどかちゃんに嫉妬してます?
ってか、そうたくん、たつきくん、先生の足踏むのやめようか、地味に痛いんだけど。
「ケンジ先生はまどかのこと、キライ?」
「うっ⋯⋯す、好きだよぉ」
「本当?まどか嬉しい」
好きって聞かれたら、『うん』って答えられるけど、キライって聞かれたら、『好き』って言うしかないじゃないか、って、まどかちゃん、首に抱きつくのやめようか、って、ほっぺにちゅぅはダメだって!
あ、百香の視線が痛い。
これ、不可抗力だから、俺のせいじゃないから!
「は、ははははっ、痛っ!あ、百香先生、ちょっと待って」
そうたくん、たつきくんには蹴られるし、まどかちゃんは離れないし。
この子、わかっててやってるよね。
だって、口元が笑ってるもん。
ってか、待て、百香、俺が愛してるのはお前だけだってば!
うぅ、女の子怖いよ!
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(´-ι_-`) 女の子は何歳でも『女』なんですよ⋯
8/20/2024, 2:50:44 AM