村人ABCが世界を救うまで

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ベッドの中は温かい。優しい身体の曲線を辿る度に、幸福感に包まれる。乱れた髪を撫でつけて耳にかけてやると、彼女の疲れた顔がにこりと笑った。僕のずっと知ってる顔でほっとする。
「鳥が、鳴いてるね」
ムードもそこそこに、外で家畜が朝を告げる。
「今日はずっとこうしていたいな」
そしてふふっと笑った吐息が僕の前髪を揺らす。
「僕は…」
深刻な声音をすぐに察して彼女が改めて見てくる。
「なぁに。言って」
ああ、敵わない。
「ずっとこの村に居たいよ。君とずっと、子供に、孫に、辺境だけど恵まれた豊かなこの地で暮らしてほしい」
「まるで貴方が居なくなるみたい」
ばれてる?と顔で聞くと、バレてますと見つめられる。
「どうかここで暮らしていてほしい。必ず帰るから」
「出稼ぎに行く男の半分は帰ってこないのよ」
うっと言葉に詰まる。
うそよ、って笑ってるけど目が真剣。
「大丈夫。あなたは…カノンは嘘つかない。冗談だって言えない。知ってる」
彼女の包み込むような優しさに触れて、思わず柔らかい裸体をだきこむ。猫のような声がする。

生きて行きたい、君と。力がこもって苦しげな切ない喉の音を聞いた。

でもその前に世界を救わなきゃいけないんだ。

3/2/2026, 12:23:41 AM