父の遺灰を海へと撒いた
空の男であった父からの、たっての願いであった
しかし、何故?
雲一つない青空を見上げ、ふと思った
確か空に散骨はできるはずだ
『空のことは大抵知り尽くした』
引退した時の父の言葉を思い出した
っとしてもだ
爽やかな空の青さとは違って
ほの暗い海の青は吸い込まれていきそうだ
遺灰は波にさらわれ、もまれ、
ついには海の底へと沈んでいくかもしれない
光の当たらない未知の世界
いまとなっては海へと飛び立った父の想いを知る術は無い
#6 『海底』
1/20/2023, 4:09:02 PM