飛花

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「律樹、もう帰るの?」
 彼氏がそそくさと帰ろうとしたから、引き止める。クリスマスにすぐ帰宅だなんて、夢がないにもほどがあるよ。
「え、どっか行きたい? なら行くけど」
 わたしの彼氏は、Top of the 受け身。わたしも別に肉食ではないけれど、律樹が受け身すぎて、誘いまくる他ない。
「どっか行きたいというか……まあ、駅前のイルミネーションでも見に行こ。折角のクリスマスだし」
 そう言ってわたしは彼の手を引いた。手を繋ぐのは相変わらず恥ずかしい。でもわたしから繋ぎにいかないと繋いでくれないから。そう暗示をかけて手を掴む。
「クリスマスだからって……咲優が言うならたまにはいいか」
 律樹はそう言って微笑んだ。んもう、恥ずかしいのか好きじゃないのか何も知らないのか。そっちからも誘ってくれてくれていいのになあ。

 それが去年のクリスマスの出来事。今年はどうだろうか。わたしの必死の教えのお陰で、たまに向こうから誘ってくれるようになった。けれど、それはわたしが「行きたいな」という雰囲気を10回以上醸し出してのこと。クリスマス、一応予定は空けているけれど、誘いが来なければ独りだな。
 と、1件のLINEが来た。
「クリスマス空いてる? もしそうなら行きたいとこがある」
 心臓が吹っ飛びそうだ。






#冬になったら

11/18/2023, 2:20:20 AM