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幸いなことに、これまでの人生では、あまり病室のお世話にならなかった。

ただ、1度だけ検査入院を経験したことがある。
いわゆる指定難病というやつの疑いが掛かり、5日程度、毎朝毎晩採血を受けなければいけなかった。

ところで私は、血管が異様に出づらい体質だ。
看護師泣かせの細っこい血管が、さらにタチの悪いことに、分厚い脂肪に守られて、すっかり見えない。この時の入院でも、当然それは変わらなかった。
運の悪い新人の看護師さんが、心底申し訳なさそうに何度も血管を探していたのを覚えている。刺してはうまく取れず、また刺し直しては取れずと繰り返す。救援に呼ばれた、ベテランの風格をした看護師さんも、1度間違えてからさらなる救援を呼んだ。
最終的に、私の血管に正確に針を刺せたのは、3人目の看護師さんだけであった。

ちょっとばかり誤解を招きそうな見た目になった腕を眺め、看護師とはかくも有難い仕事だと思った。
私の難攻不落の血管に挑んでくれた彼女たち。差し入れなんていうのは、このご時世じゃ中々できない。
せめてもの感謝の気持ちは、この立派に育った脂肪を減らすことでその代わりとしたい。

8/2/2024, 10:30:58 AM