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「私が今ここにいることって多分奇跡なんだよね」

隣に座っている友人が空間を見つめながらそう言った

「一昨日ね、お母さんに包丁を突きつけられたの」



友人はお化粧も綺麗にして
可愛い服を着て、
落ち着きをもって私の隣に普通に座っていた
一昨日お母さんと美味しいディナーを食べたのと言いそうな風貌だった

「私が朝帰りしたのが許せなかったんだって、
昼の11時に土下座するなんて、私この人生でもう二度としたくないなあ」

あははと乾いた笑いが響く

私もこんな話をされて黙っているのは気が引けた
だからとっておきの秘密を話してみた
彼女の心に寄り添うつもりで
すると驚愕された

「ええっすごいね、よく乗り越えられたね」

私からすると包丁の方がよく乗り越えられたと思うが、
その言葉を飲み込んで
私も乾いた笑いを響かせた

窓の外からは何時なのか分からない光がさしている
あいまいな空からこぼれる
あいまいな光だけが
私たちを守るように確かに存在していた

6/15/2024, 9:00:40 AM