君と過ごす放課後が好きだ。
君はクラスのいわゆるマドンナでみんなから好かれていて僕とは真反対の人間だ。そんなに接点もない。
だけど、放課後だけはお互いのおすすめの本を持ってきて交換して、喋るでもなくただ本を読む。
外からは部活動をしてる学生の声が響く中、教室にぺらりと紙の音が充満していく。
そんな関係が心地よかった。
今日も君との週に一回、約束の時間。
お気に入りの本を図書室で借りて教室へ。
この前の少女小説は僕が読まないタイプで面白かった。
君もミステリーは読まないようでのめり込んで読んでいたのをよく覚えている。
今日の小説は、この前とは違う時代小説。君はどんな作品を持ってきているだろうか。
少しわくわくしながら教室で待つ。
時計がかちりかちりと音を立て時の流れを教える。
気がつけば、約束の時間から1時間がすぎていた。
君は時間はきちりと守る方で1度も遅れたことがなかったのに来る様子もなかった。
なにか用事でもあったのだろうか。もう帰ってしまおうか。いや、もう少しでも待とう。
小説を片手に時計を眺める。
ふと、夕日がこちらにさして本を照らしているのに気がついた。
そんな情景に心奪われ、夕日を見ようとした瞬間、窓の外の夕日をさえぎって君が視界に流れていったのが見えた。
【放課後】
10/12/2023, 5:15:43 PM