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意味がないこと


「ねえ、本当にこんなことして意味なんてあるの?」
蝉がうるさく鳴く中、暑さにちょっぴりイラつきながら目の前に座る彼女にそう聞いた。彼女は銃を組み立てながら答える。
「さあ、どうだろうね。……意味なんてないのかも」
どこかおどけたような声音なのに瞳は真剣そのもので、思わず口をつむぐ。彼女はそのまま続ける。
「意味のないことだらけだよ、この世界はそういうものであふれていて、それに意味をつけて生きているんだ。……まあ、確かに『これ』は意味のないことかもね。大人たちにとっては。でも私たちは本気だ」
組み立て終えた銃を持って、彼女は立ち上がる。

夏休みが始まってまもなく、廃墟となった学校で彼女は小さな反抗を始めた。それは次第に町の子どもたちに伝わり、一人二人と仲間が増え、今では廃墟だとは思えないほど子どもたちであふれかえっていた。
「生きるためだ」
彼女は言った。
「大人たちに使われる道具なんかじゃない。私たちは私たちだ。大人から見たらちっぽけな反抗だ。でも、私たちは生き残るために戦う」
「言うことを聞くいい子でいるのはもう終わりだ。さあ、始めよう」
その一言で全員が頷く。各々が手に武器を持って、彼女を先頭にして歩いていく。向かう先は屋上、敵である大人たちはすでにグラウンドにたくさん集まっていた。

きっとこんな反抗をしたところで大人たちは変わらない。変われない。
いつか自分たちがそんな存在になることはわかっている。でも今だけはまだ抗っていたいのだ。

夏の日差しが照りつける中、まさに戦いにふさわしい日に私たちは声高らかに戦いを宣言する。
意味のない戦いだ、そう大人たちは言う。ざわざわと騒ぎ出す声にニヤリと笑って、言い返す。
「なら、意味をつけてよ。得意でしょ?」

11/8/2022, 1:38:39 PM