次回投稿分に繋がるかもしれないおはなし。
最近最近の都内某所、某本物の稲荷狐が住まう稲荷神社敷地内の一軒家に、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
この子狐は、去年のはたらきが認められまして、
「ここ」ではない別の世界の、大きな公的機関、
世界線管理局へ修行に出されました。
ところで
その管理局で子狐の世話をしておる法務部の
執行課実動班・特殊即応部門の副部長は
ビジネスネームをツバメというのですが、
これがなかなかのコーヒーダイスキーでして。
「子狐、きみの世界で私達法務部執行課が為している、巡回の仕事を見学しに来ませんか?」
コンコン子狐が出向先の、環境整備部の大きなカーゴルームで、悪いネズミにバシバシばん、キツネパンチしておったところ、
副部長・ツバメがフラッと入ってきて、子狐に優しく穏やかに、言いました。
「さっき仕事が来て、私が出ることになりました。
せっかくだから、一緒に行きましょう」
おそと!おそと!
ちょうどコンコン子狐、退屈しておりましたので、
尻尾振って耳もペタンコ。ツバメにくっついて嬉しそうに、歩いてゆきました。
「別の世界から勝手に、無許可で渡航してきている悪いやつがいないか、見回りに行きます」
君の世界のような、若くて安定しているところは、
滅びそうな世界からの脱出先、移民先として、目をつけられやすくてね。
密航者がいないか確認して捕まえるのも、我々の仕事のひとつなんですよ。
ツバメは子狐に管理局の仕事を説明しながら、
環境警備部の偉い人に事情を話して、
行ってきますと行ってらっしゃいの挨拶をして、
環境整備部から法務部に、向かいました。
そして、ここでお題回収。
「ただ、仕事にとりかかる前に、
どうしても欲しいコーヒー豆があるのですよ」
そうなのです。
このツバメというコーヒージャンキー、
積雪地域で今の時期にだけ手に入るという
特別な存在、特別な商品、特別なコーヒー豆、
すなわち冷たい雪の中で保存された長期間限定品、
雪室コーヒー豆がこのたび某雪国で、雪室から取り出されたとの情報を入手したのです!
要するに特別な存在のため、仕事をサボるのです。
「サボりなんてそんな。
私は仕事の前日から現地入りして、自分の自由時間で特別な存在を購入しに行くだけです」
さあ子狐。私と一緒にまず雪国へ、季節限定の特別な存在、特別なコーヒーを、
すなわち雪のコーヒーを、迎えに行きましょう。
尻尾ぶんぶんの子狐に、ライダー風の帽子とイヤーマフと、ポンチョとハーネスをしっかりつけて、
ツバメは子狐を、バイクのペットキャリー席に丁寧に乗せました。
「ばいく!バイク!」
「そうです。バイクです。一緒に行きましょう」
「キツネバイクはじめて」
「それは良かった。風が気持ち良いですよ」
さあ行こう。特別なコーヒー豆を、迎えに行こう。
バイクに乗せられた子狐のテンションは最高潮!
尻尾などブンブンのビタンビタンです。
子狐は去年の夏頃まで、そもそも都内から出た経験すら無かったので、
遠くへ行くのは楽しいし、嬉しいのです。
さあ行こう。特別な存在を、迎えに行こう。
サラっとお題回収しつつ、バイクにまたがりツバメと子狐は、静かで上品なエンジン音を置き去りにして、道路を進んでゆきました。
ところでツバメが行きたいという「雪国」、
現地の天気予報が不穏で、ときおり雨がザーザー降りになるそうですが……??
3/24/2026, 6:21:13 AM