『命が燃え尽きるまで』
ずっと彼女と一緒に戦っていたかった。
命が燃え尽きるまで、ずっと。
彼女の剣に乗った熱に、盾役の自分まで浮かされてしまう感覚が、とてつもなく心地よくて。
その感覚を体に刻み込めるまで、彼女と冒険していたかった。
なのに。
彼女の偉大な細い背中が離れていく。
いつものズボンと革鎧ではなく、暖かい黄色のワンピースをまとって。
彼女は冒険者を引退した。
親の仇を討ち取って、体を蝕むほどの熱から解放された彼女は、朗らかな笑顔で冒険譚に幕を下ろした。
そばにあった炎が離れて、気づいた。
自分には、ひとりで燃え尽きるだけの炎は宿っていないのだ。
命が燃え尽きるまで。
そんな生き方を、終わり方を、求めていたのに。どうやら、ひとりでそれは叶えられそうにない。
僕は盾役。
それは、誰かといないと突き進めない僕の人柄を反映した役職だったのかもしれない。
彼女のように、力ある炎を燃やすには。
僕はどんな生き方ができるだろうか。
9/14/2024, 11:27:58 AM