もう手を離さないといけないと思った。
私と彼女を繋いでいたのは、赤い糸なんて不確かなものではなくて、もっと物理的なものだったし、お互いに手繰り寄せて出会えたのだと本気で思っていた。
彼女のことは一目見る前から愛おしかったし、そもそも愛の産物なのだから、出会ったあとに愛さないなんて選択肢はなかった。
だから、彼女の邪魔をする存在は、全て彼女のいる世界から追い出した。
最初は、個性が見られないと言ってきた幼稚園の教諭。次は、彼女を医者にしようと無理矢理塾に入れようとした男。最近では、彼女をそそのかす悪い友人。
こんなに尽くしてきたのに、体が大きくなるにつれてそっけなくなる態度に私は納得がいかなかった。
「私って邪魔かな」勇気を出して聞いた。
「気持ち悪い」そう言った彼女の顔は、引き攣っていたのか、笑っていたのか私には分からなかった。
手を離さないといけないと思った。
学校のはじまりのチャイムがなる頃、私は押入れにしまっておいた彼らの爪をブレスレットのように腕に巻き付けて、一本の太い糸と共に彼女の部屋に行った。
お題:赤い糸
7/1/2024, 1:51:23 AM