これまでずっと、自分の素を出せなかった。
出さなかった。出したくもなかった。「本音」なんて醜いものを厳かに、さも有り難そうに突き出す人間にだけはなりたくないと、ひたすらに自分の心を隠して生きていた。
笑顔という鎧を着込んで、大人という盾を持ち、周りと同じ速度で歩く。築き上げたそこそこの世間体を武器に、それなりの人生を過ごしてきた。
今までずっと、そうやって生きてきた。きっと、これからもそうだろう。三つ子の魂なんとやら。人の生き方は変わらないものだ。
それでもまだ、時々は思うのだ。私の醜い「本音」も何もかもに触れて、大丈夫だと笑ってくれるひとが、いつか現れるのではないかと。
7/12/2022, 2:49:39 PM