微熱
「あーなんか熱っぼいな。」
リビングに入ってくるなり、誰に言うでもなく、独り言にしては大き過ぎる声量で夫が言った。
電子体温計を見つけ出し、おもむろに脇に差し込む。
私は撫でてくれと付き纏う犬の背中を優しく撫でてやりながらチラと夫を見た。
ピピッと電子音が鳴り、体温計を引き抜く夫。
「やっぱりかー、三十六度七分。うん、熱があるな、微熱だ。」
夫は満足気にこちらを向き、体温計の先をチラチラ振ってみせる。
私はその姿を見て無性にイライラしてしまった。
この感情に名前を付けたい。
どうせろくな名前にはならないだろうけど。
足元では、犬がまだ私に撫でろと催促し続けている。
お題
微熱
11/26/2024, 10:02:07 AM