盛の終えた秋桜が頭を垂れている。
夕暮れが迫る黄昏時。
雑草ばかりが目立つ広い野原にて
かつては美しく咲いていたであろう秋桜を見つけた。
ヒョロリとした茎と頭を垂れる花弁が、黄昏時の黒いシルエットとなって秋風に揺れている。
かつて、この野原には大型ショッピングモールが立っていた。
オープン仕立ての時は沢山の客で賑わい、連日家族連れやカップルが買い物を楽しむ立派な娯楽施設だった。
しかし、不景気の波に飲まれ、惜しまれつつも閉店とあいなった。
私自身も好きなショップがいくつかあったので、惜しんだくちだ。
その後ショッピングモールは取り壊され、広い敷地は買い手のつかぬまま放置に至り、今となっては雑草が伸び放題の野原へと姿を変えてしまった。
こういうのを何と言うのだったか…。
諸行無常…。国破れて山河あり…。
どれもあっている気がするが、もっと相応しい言葉があったような…。
脳内の辞書を手繰りながらぼんやり考えていると、ピューッと冷たい風が頬をさした。
晩秋の風は一足先に冬の気配を纏っている。
実に気の早いことだ。
…風。
あぁ、そうか。相応しい言葉が見つかった。
秋風索莫。
─栄えるものが衰えて、もの侘びしくなる様─
自然も、人が作り出したものも、時の前には無力だ。
だからこそ、
日々の何気ない時が、かけがえのないほど愛おしい。
そう結論付けた私に、秋桜がコクリコクリと首肯していた。
11/14/2023, 10:54:44 AM